会計事務所職員の独り言 その12
前回は、中小企業の収益構造の改善について「売上を伸ばすことの是非」について述べさせていただきました。
「適正な販売価格の確保」に満たない価格での商品・サービスの販路拡大による収益性の改善は、絵に描いた餅になるとも述べさせていただきました。
もし、収益性の改善または向上を図ることを検討する上で参考になればと思い、ここで一つの例をあげて説明させて頂きたいと思います。
年商100,000千円 粗利益率(限界利益率)20% 販管費・営業外損益(固定費)21,000千円 経常利益△1,000千円の企業があったとします。
この企業が経常利益3,000千円に収益性を改善したいと考えております。(前提条件として、固定費の見直しを検討し21,000千円は最低限の固定費であり、商品単価は834円)
(834円×500人/日×20日/月×12月)で年商1憶円であったと仮定します。
まずは、適正単価について検討してみましょう。
固定費と仕入単価が変わらないとすると、目標経常利益3,000千円+1,000千円=4,000千円の年間売上単価の上乗せが適正価格となります。
そうすると、4,000千円/500人/20日/12月=33.3円∴34円単価を改定する。
(868円×500人/日×20日/月×12月=104,160千円)
では、商品単価改定前の損益計算書と改定後の損益計算書を示すと以下のとおりになります。
改定前 商品単価改定後
売上高 100,000千円 104,000千円
仕入高 80,000千円 80,000千円
限界利益 20,000千円 24,000千円
固定費 21,000千円 21,000千円
経常利益 △1,000千円 3,000千円
以上から解るように、商品単価を834円から868円に改定するだけで赤字から黒字に転換することとなります。
まずは、商品単価を改定することを前回その11のキーワードを参考に可能性を検討してみてはいかがでしょうか。
少なくとも、適正単価を検討することは、販路拡大による固定費増加(設備投資含む)や運転資金の増加を招くことになりますので、とても重要な検討事項になります。
適正価格の算定が出来れば、その単価で販売するための最重要事項として検討することによって、必ず新たな戦略が構築されると思います。
現に高収益の企業に共通していることは、商品・サービス単価が高いことがあげられます。
その企業には同業他社と比べての競争力があります。
その競争力について、原点に戻り見直しをするキッカケになれば幸いに存じます。
著者:國安 浩文