税金コラム

接待後のタクシー代は交際費?旅費交通費?

先に結論を書いておきますが、基本的には以下の整理になると考えます。
いずれも自社役員・従業員が利用するタクシー代を想定しています(not接待の相手先が乗るタクシー代)。

1.接待する際の行きのタクシー代→交際費
2.接待する際の帰りのタクシー代→旅費交通費
3.接待される際の行きのタクシー代→旅費交通費
4.接待される際の帰りのタクシー代→旅費交通費

なお、タクシー代に限らず、電車代や高速代なども同様の整理で良いと考えます。

主に上記2の接待する際の帰りのタクシー代について、以下で解説していきます。

多くの税務調査官は交際費を広義に解釈する傾向がある?

税務調査において、その支出が交際費に該当するか否かは度々論点にあがります。
とはいえ、中小企業においては年間800万円まで交際費の枠がありますので、その枠が十分余っている場合はいずれにしても損金になるため、問題になることはありません。
当該枠を既に使い切っている、または税務調査により枠を使い切るような状況にあるときは、論点にあがる可能性が高いです。

ほとんどの税務調査官は交際費の範囲を法令の文理解釈によってではなく、独自の基準により広義に解釈する傾向にありますので、世の中の多くの税務調査において、不当に交際費課税が行われている実態があるのではと想像します。

また、税務署によっては、二要件説から三要件説に解釈が変わる前の古い判例(昭和55年4月21日東京地裁判決など)を根拠に広義に解釈しているケースなどもあり(令和6年現在)、管轄の税務署によっても判断が異なるという曖昧な課税方針となっているのが現状と思われます。

交際費等とは

交際費等の定義は措法第61条の4 ⑥に記載されています。

交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいい、~
※一部カッコ書きを省略しています。

「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」と記載がありますが、これは並列的例示と呼ばれるもので、「その他」の前の文言と後の文言は独立していて、それぞれ別の概念として解釈します。
つまり、接待、供応、慰安、贈答という4つの行為のほか、これらに類する行為のいわば計5つの行為に該当するかどうかという解釈になります。
そして、5つ目の「これらに類する行為」の範囲がどこまで及ぶのかということが論点となりますが、あくまで接待、供応、慰安、贈答という4つの行為に類似する行為のみが対象になるという解釈が正しく、税務署はこれをかなり広い範囲で考える傾向があります。

二要件説から三要件説に

平成15年9月9日高裁判決の萬有成約事件を契機に、従来の二要件説から、現在は三要件説が支持され、判決や裁決においても採用されています。

  二要件説 三要件説
支出の相手方 事業に関係ある者等 事業に関係ある者等
支出の目的 事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ることであること 事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ることであること
行為の形態   接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であること

 

三要件説への当てはめ

北海道税理士会審議室報において、「得意先等を接待した後に、役員が帰路に就くためのタクシー代の交際費等該当性について」が公開されており、三要件への当てはめが参考になるので記載します。

要件 本件への当てはめ
①    「支出の相手方」が事業に関係ある者等であること 「事業に関係がある者等」とは本件の場合、被接待者のことを指すと考えらえるが、本件支出は接待行為が終了した後に役員自らが帰路に就くために支出したものであり、被接待者は本件支出に何ら関わりを持っていないと考えられる。
②    「支出の目的」が事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ることであること 本件支出の目的は役員が帰路に就くことにあり、本件支出は事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ることに寄与しないと考えられる。
③    「行為の形態」が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であること 本件支出は、接待行為が終了した後、役員自らが帰路に就くために支出したものであり、接待行為とは別の独立した行為と考えられる。

出典:北海道税理士会審議室報(第41号 平成29年3月15日発行)

 

上記のとおり、得意先を接待した後の役員が帰路に就くためのタクシー代は交際費の三要件説のいずれにも該当しないという整理で、北海道税理士会の審議が行われており、筆者もこの考え方に賛同します。

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