会計事務所職員の独り言 その11
今回は、中小企業の収益構造の改善について考えてみたいと思います。
まず真剣に考えなくてはならないことは、収益性の改善手段として売上を伸すことの是非です。
特に中小企業は、一般的に大手企業等の下請けや薄利多売等の市場環境の中での自由競争下において、自然発生的に本来あるべき適正な販売単価を得ることが困難な状況が生じることとなると考えます。
更に追い打ちをかけるかのように少子高齢化による人手不足問題や労働環境の改善が法的に求められている中で、ますます厳しい中小企業を取り巻く環境が厳しくなっていると感じます。
もし、そのような環境の中で、適正な販売単価に満たないままで、その解決を先送りして売上を伸ばすことを柱とした改善計画を作成したとしても、偶然の出来事が無い限り成功は無いといえましょう。
なぜならば、適正な販売単価に満たないということが収益性悪化の原因の根本的要素になっている以上、これを解決しなければ単なる延長線上の拡大戦略は、「のどが渇いたから塩水を飲む」という判断をすることと同じこととなりましょう。
計算的にマイナスに整数を乗じてもプラスにはならないことからも「適正な販売単価に満たない価格のままで進める拡大戦略は、絵にかいた餅」になると考えなければなりません。
そこで考えなくてはならないことは、いかにして適正単価で取引を可能にするかということですが、その取引を可能にするにはどうしても「企業は人なり」という言葉からも良い人材の確保(人材育成含む)が必要不可欠となります。
中小企業の収益構造の悪化の一つに労働環境の改善(特に社会保険の強制加入や残業手当等の厳格化、労働環境の整備等)という社会の流れも大きな原因となっていますが、良い人材を確保(固定化含む)するためには魅力ある環境を作らなければ、優秀な人材確保ばかりか人材採用自体も困難になると予測されます。
よって、適正な販売単価の計算には、優秀な人材確保のコストを加味することも大切な要素となります。
適正な販売単価が計算されれば、現状との差異をどの様にして補うかを時間かけて真剣に考えれば「新たな戦略」が必ず見えてくるはずです。
書面の関係上、続きはシリーズ12に、「独り言」という形で、また話をさせて頂きたいと思います。
最後に、私なりの「改善計画キーワード」をいくつか上げさせていただき、次回シリーズ12に続けたいと思います。
「お客様の評価=企業の業績」「社員満足=お客様の評価=企業の業績」「こんな商品・サービスがあれば助かる。又は嬉しい」「感謝・謙虚な姿勢」「経営は人なり」「資源の適正配分」
著者:國安 浩文