会計事務所職員の独り言 その9
今回は、「適正単価」についてお話させていただきたいと存じます。
前回は過度な自由競争が生み出す弊害について述べさせていただきました。
過度な自由競争は企業の適正利益確保を困難にする結果をもたらし、単価の改定なしに
業務拡大を図ろうとすると更に収益性を悪化させてしまうことになりかねません。
企業が経営を続けるためには収入を得なければならなりません。
また、企業の存続発展を考えるならば黒字であることが大前提となります。
ここで注意しなければならないことは、適正単価を下回った金額で収入の拡大を図り事業規模を広げてしまうことです。
「収入=単価×数量」となりますので、数量を増やす戦略は適正単価を下回っていれば、数量の増加に伴い設備や人件費等の固定費が新たに必要となる企業である場合は命取りになりかねません。
たとえば、事業拡大に伴う運転資金として融資を受けた場合は当然、借入金と利息を企業利益(納税資金も考慮)の中から捻出しなければならなくなります。
そうすると数年のうちに借入金による運転資金は枯渇し、借入返済をするために経営者自らが資金繰対策に追われることとなり思うような経営が出来なくなってしまいます。
このようなリスクを事前に避けること、又はそのような状況から脱却するためには数量の拡大から、単価の増額に目を向け販売単価の見直しを行うことが考えられます。
当然、単価の改定は、設備や人件費等の固定費の増加は伴わないと考えれば、「増額改定金額×数量=利益の増加」という計算になるわけですので、特に資本力が少ない企業の収益性の改善には是非とも検討するべきと考えます。
実際に安定した利益を計上している企業に共通している内容を分析すると、単価が高く(適正単価の維持)、常に経営者は単価(他社より高くても頼りになる)を意識していることです。
「数量の拡大より単価を重視する」姿勢は人手不足が問題となっている昨今に於いて、理にかなっていると考えます。
そこで「単価の増額改定」の手法を検討し、それを実行しなければならないわけですが、書面の都合上、詳しく触れることは出来ませんが一言でまとめるならば、「自社の取り扱い商品・サービス」で自社だから出来ることなどの優位性をまとめ、それを強みとしてお客様、得意様に周知・宣伝(営業活動)することと考えます。
企業利益を増やす原理原則は、固定費削減=利益の増加(但し、人件費等については慎重に検討が必要(本来は自社の一番大切な存在のはず))・単価の増額改定=利益の増加(固定費等の増加なしで実現可能)とこの二項目は利益の増加に直結しますが、数量の増加は適正単価を下回ったままでは逆効果になるリスクがあるため、無駄な固定費の削減と適正単価の構築後に着手するべきものと考えます。
以上、今回の会計事務所職員の独り言となります。
著者:國安 浩文