休業手当は損金・必要経費になる?税務上の取扱いについて(法令根拠付き)
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言により、特に飲食店・宿泊業などでは休業等を余儀なくされている方もいらっしゃると思います。
そのような事業者は、一定額以上の休業手当を従業員に支払うことで雇用調整助成金が受給できますが、この休業手当は税務上どのような取扱いになるのでしょうか。
税務上の取扱いの前に、まずは前提となる労働基準法第26条をみてみましょう。
(休業手当)
第26条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中当該労働者に、その平均賃金の 100 分の 60 以上の手当を支払わなければな らない。
そして、上記の休業手当を支払ったうえで一定の要件を満たす場合は雇用調整助成金が受給できるとされています。
それでは、本題の税務上の取扱いにまいります。
1.休業手当を支払う場合の課税関係(事業者側)
使用者の責に帰すべき事由によって休業する場合は、労働基準法第26条のとおり、休業手当を支払わなければいけませんので、事業に必要な費用として法人では損金、個人事業主では必要経費になると考えます(法法22③、所法37①)。
なお、今回のコロナによる休業を考えますと、例えば国や自治体の休業要請によりやむなく休業する場合は「使用者の責に帰すべき事由」とはならない可能性もあると思いますが、仮にそうであっても上記に準じて、いずれにしても損金・必要経費になると考えます。
2.雇用調整助成金を受け取る場合の課税関係(事業者側)
休業手当を支払った後で、事業者は雇用調整助成金の申請をして助成金を受け取るわけですが、これは経費を補填するために受け取るものですので法人では益金、個人事業主では収入金額に計上します(法法22②、所法36)。
休業手当が損金・必要経費になるわけですから当然といえば当然です。
消費税の取扱いは不課税(対象外)となります。
なお、益金に計上する時期について、法人税基本通達2-1-42に休業等の事実があった日の属する事業年度の益金にする、受給金額が具体的に確定していなくても見積計上すると記載されています。
つまり、助成金の支給決定日や入金日ではなく、未収計上により費用と収益を対応させる必要があります。
法基通2-1-42
法人の支出する休業手当、賃金、職業訓練費等の経費を補填するために雇用保険法、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、障害者の雇用の促進等に関する法律等の法令の規定等に基づき交付を受ける給付金等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった日の属する事業年度終了の日においてその交付を受けるべき金額が具体的に確定していない場合であっても、その金額を見積り、当該事業年度の益金の額に算入するものとする。
所得税には法基通2-1-42と同様の規定はありませんが、同じ取扱いでよろしいと考えます。
3.休業手当を受け取る場合の課税関係(従業員側)
労働基準法第26条の規定に基づく休業手当は給与所得として取り扱われます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1905.htm
執筆者:税理士 藤田賢