法人で耐用年数に誤りがあった場合の処理について
建物や車両などの減価償却資産は、取得価額を耐用年数に応じて年々減価償却していくというのはご存じだと思います。
では、耐用年数を誤って適用してしまった場合はどうなるのでしょうか?
2つのパターンがあるのでそれぞれご説明します。
今回は法人の話です。個人事業者の場合はまた違った判断になりますのでそれはまたの機会にご説明します。
1.新品で取得した資産
例えば、本来の耐用年数が4年なのに、誤って6年として減価償却費を計上していた場合です。
この場合、次年度から正しい4年で減価償却費を計算し、過年度分について訂正はできません。これは、減価償却費の損金算入は損金経理(会計上での費用処理)を要件としているため、遡及して減価償却費を計上することができないためです。
2.中古で取得した資産
中古で取得した資産については次の3つの耐用年数から選択適用することができます。
(1)法定耐用年数(新品取得の場合と同様)
(2)使用可能期間を見積もった年数(見積法)
(3)使用可能期間の見積りが困難なときは次の計算式により計算した年数(簡便法)
①法定耐用年数の全部を経過した資産
法定耐用年数の20%に相当する年数
②法定耐用年数の一部を経過した資産
法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数×20%を加算した年数
なお、実務上は上記(2)は合理的に使用可能期間を見積ることが難しいため、上記(1)か(3)を適用することがほとんどです。
本題に戻りますが、中古資産を取得した場合、(2)や(3)の中古の耐用年数ではなく、(1)の法定耐用年数を適用してしまった場合はどうなるでしょうか。
この場合、耐用年数を変更することはできず、法定耐用年数のまま減価償却していくしかありません。
これは、上記3つの選択はあくまで納税者が任意に決定することができるものであり、上記(2)(3)の算定は、「中古資産を事業の用に供した事業年度においてすることができる」こととされているため、後から変更することができません(耐通1-5-1)。
このように、耐用年数の決定は資産を取得した年度に慎重に判断しないと、毎年の税金が大きく変わってきますので注意してください。
特に不動産のように耐用年数が長く、金額が大きい資産で耐用年数を誤って適用してしまうとダメージが大きくなってしまいます(税理士変更の際によく適用誤りを見ます)。
筆者:阿部拓未