船舶の購入が節税になる仕組みと税務調査で否認されないためのポイント
船を購入すると節税になるという話を聞いたことはありますか?
これについては巷に誤った情報が流れていることをよく耳にします。
船は経費にならないと言われたということも聞きます。
ここでは、船・モーターボートを購入した際の節税について記載してみます。
目次
船が節税になる仕組みとは?
ここでは船が節税になる仕組みについて、事例をもとに見ていきます。
例えば法人で以下の船を購入しました。
- 購入価格:5,500万円(税込)
- スペック:42フィート、初年度登録から10年経過の中古艇
- 年間維持費:保管費132万円(税込)、保険料15万円、燃料費33万円(税込)、メンテナンス費40万円(税込)
この船を福利厚生目的または取引先等の接待交際目的で事業用に使用するとき、以下の節税効果があります。
法人税等
減価償却費
法定耐用年数の4年を経過している中古艇のため、定率法(耐用年数2年)により初年度に5,000万円(税抜経理の前提)全額を損金に計上できます(事業年度の途中で取得し事業供用した場合は月割り)。
年間維持費
合計約186万円(税抜)を損金に計上できます。
上記のとおり、初年度に計5,186万円を損金に計上することができ、法人税等の税率35%とすると1,815万円(5,186万円×35%)の節税効果となります。
消費税
消費税の課税事業者の場合、上記法人税等の節税効果に加え、消費税の納税額を押し下げる効果があります。
上記の事例では、船の購入価格に係る消費税500万円のほか、年間維持費に係る消費税約18万円も仕入税額控除の対象になり、合計518万円が消費税納付額を減少させるのでそれが節税効果となります。
なお、令和5年10月から始まるインボイス制度導入後は、支払の相手先から適格請求書の交付を受けることが仕入税額控除の適用を受ける条件となります。
合計
上記①+②=2,333万円が初年度の税金を減少させることになります。
税務署に否認されないためのポイント
船を購入すればどんなケースでも経費として認められるかといわれればそうではありません。
社長の個人的な趣味で、友人や家族とだけ利用していて事業用に利用していないと判断されれば税務調査で否認されることになります。
一方で、船の購入・利用が実際に事業にプラスの影響を与えているケースも数多くあります。
従業員の福利厚生目的で船を購入し、従業員との親睦も兼ねて船を利用していて退職者数が減ったという会社や、得意先等の接待目的で船を購入し売上アップに繋げられた会社などです。
つまり、専ら事業用に使用しており、それを税務署に説明することができれば否認される可能性は低いと考えてよいでしょう。
税務調査で否認されないために以下のポイントをしっかり認識しておいてください。
船舶の使用履歴をしっかり付ける
いつ、誰と、何のために使用したかの記録をしっかり残しておいてください。
結局ここがもっとも重要です。
当たり前ですが、嘘の記載はダメです。
プライベートで使用した際は燃料費等の実費を経費に落とさず、使用料を法人に支払う
あくまで法人が所有している船です。法人は営利目的で存在していますので、社長個人がプライベートで使用する際は使用料を個人から徴収するようにしてください(福利厚生目的で所有する場合の従業員が使用する場合を除く)。
また、既に入っている燃料で船を利用する際は燃料代も別途支払ってください。
このように、事業用とプライベートで使用するときをしっかり区別しておくと、税務調査で否認されにくくなります。
なお、全体の利用状況からしてプライベート利用が占める割合が多い場合などは否認される可能性が高まることにもなりかねないので注意が必要です。
節税といってもあくまで課税の繰り延べ
船が節税になると言われる仕組みと税務調査で否認されないためのポイントをご理解いただけたでしょうか。
ただし、上記では節税といいましたが、正確には課税の繰り延べにすぎません。
つまり、船を買ったときには上記事例のように初年度で2,333万円の節税効果がありますが、これを数年後に購入価格と同額で売却した場合には同じ金額を納付することになります。
とはいえ、利益が出ているときに船を購入して節税しておき、一時的にでも儲からない時期に売却するなどは経営面・財務面でも有効といえると思います。
節税という言葉に惑わされずに、本質をみて購入するか否かを判断いただければと思います。